第二弾 

 先ほどのレビューよりも長くしたものも用意しました。

 長過ぎかつ冗長ですが・・・

 

 

penginsengen.hatenablog.com

(前半は同じです)

 

著者のHPがあり、こちらにサポート資料がありました。パンフレットなどもあるので一読してから購入を検討が良いと思われます。
 http://katolabo.web.fc2.com/support.html
 また同じく著者のサイト
 http://katolabo.web.fc2.com/index.html
 は本書と照らし合わせて読むと著者の主張がよくわかる為合わせ読みをお勧めしたいと思います。

 お勧めな部分:読者ターゲットを明確に絞っているので、そのターゲット=ほとんど国際誌に投稿採用経験が薄い若手及び社会人学生にとっては有益。また、この著者のいう自称研究者状態(インパクトファクターIF2.0以上の国際誌に第一著者で5年以上論文掲載が無い者)の研究者にとってもその状況を抜け出すためのよい叱咤激励になるものと思われます。
 また、アカディミアの雰囲気も垣間見ることが出来るので、社会人学生や社会人学生を考えている人間にとっても有益と考えられます。
 (著者の執筆趣旨とは異なると思われますが)ツール紹介やちょっとしたテクニック等々も充実しておりますので、研究者では無く、社会人でキャリアアップをはかりたい方や、個人の趣味で研究的なことをしている人間にとっても参考になると思います。在野研究者というと大げさですが、文系分野ではその手の方も多いのでそういう方にとっても、有益だと思われます。

 読み方に注意が必要な部分:基本的にかなり辛口で、研究者と自称研究者を区別し、自称研究者への批判(国内誌や学会などへも)がかなり目立ちます。これは著者自身が厳しい研究者倫理観を持っているからであると同時に大学にもどうしようもない人間もいるのだろうと推測出来ます。
 これはこれで雰囲気がわかってよいのですが、本人談も含めて、やや読んでいて気が滅入るところがあるほか研究者像について若干偏った印象を持ちかねないところは注意です。
 ちなみに私は著者を存じてはおりませんが、著者のHPを見た限りでは学生指導もされて、国際発信のみならず日本人向けの一般・専門書も執筆されているので、FIや h-indexをひたすら追求し、そのほかはどうでもよいという方ではないようです。その為、そのような誤読には注意でしょう。自称研究者が批判しそうな「学生の指導をしない」であるとか、「そもそも国内で自分の分野に興味を持ってもらえるような活動をしなくてはならない」というものはこの著者に関しては当てはまりそうになく、それらの活動もした上で、国際誌に掲載をし続けているということを念頭に、研究者は非常に大変なのだということを理解した方が良いと思います。

 その他の感想(蛇足):また研究者と大学教員を分けて考えている(私は大学教員では無く研究者とおっしゃっています)ようで、これは非常に有益な考えでしたので、自称研究者への批判だけでなく、分離策といいますか分けて考える提言があれば良かったと思います。
 すなわち、企業にしろどこにしろ窓際族やお荷物といわれてしまう人はいると考えられます。勿論そういう方は他で輝ける可能性もあるため、職業転換が望ましいといえます。しかし、アリの法則を考えても、一部は働かない人がでることは必要悪といえます。
 そこで、そういう方は自称研究者では無く大学行政担当者等として等頑張って頂くという提言はあっても良かったのではと思います。入試ですとか大学行政も大変と聞きますので、そちらを頑張ってもらうというのは少しでも研究者の研究時間を増やす上で意味があると思います。
 →大学を回す上で必要ですし、研究がイマイチであれば、研究者の足を引っ張るのでは無く、研究者が研究しやすいように様々なことをおこなうサポート的教職員もいてもよいはずです。いきなり大学をやめろといわれても、そもそも自覚があればとうに職を辞していると思われる以上そうそう辞めることはないでしょう。で、あれば大学の中で自称研究者から、そういう方向に転換頂いて、そちらで頑張って頂く道は示した方が良いと思います。

 これは本書と関係ないですが、大学にも研究者でない人間を教員としなくてはならない事情もあり、必ずしもそれは研究者のポストを奪っているとも言いがたい=そのポストは研究者用では元々ないといえると考えられます。
 実務家教員や、特任で客寄せを入れることは大学とは?という大きな問いになりますが、少なくとも大学に実務教育的なところも求められている以上は、研究者以外の人間を教職員としての採用が求められているところかと思われます。
 実務家教員が「私は研究者」というのも滑稽ですので、実務を教示する方はそれはそれで大学教員としては認めて、別物だと分離して考える方が良いのではないかと。そのあたりの意見があれば、自称研究者への辛口コメントに関しても、「で・・・そういう方は自称研究者をやめて、実務を教える教員か大学行政、資金獲得の営業等々を頑張ってもらって、それも出来なければ、さすがにご退場頂く」という、もう少し提言的な内容にもつなげられたのではないかと思います。
 
 勿論、批判されている自称研究者が、果たして民間企業で何年も前線で戦ってきた歴戦の実務家と比べて学生に何を提供できるかは考えものではありますが…。
 ※実務家教員まで批判しているのかは定かではありませんでした。大学は研究機関とはいえない状況、研究環境が悪い、ということも書かれておりましたので、なんともですが、実務を教えるには実務家が必要で、その実務家もIF2.0以上の国際誌に投稿していることが望ましいとは思いますが、それ以上に実務の実績(例えば弁護士であればどれだけの訴訟を担当して、どれだけ優れた成績を上げたか)になるかというところだとは思います。そういう人も大学は(研究機関なのだから)採用するなということなのかもしれませんが教育機関として、また社会の中の一員として社会の中との橋渡しを主とする人間もいてよいと思います。要は多様性確保と役割分担で、そういう方々が「研究者」を名乗らない限りは許容するといいますか、研究の邪魔や誤解を生まないためにそういう大学教員もいるという、そういう切り分けがあると良いと思いました。

 脱線しましたが、企業に勤めながら趣味と若干の実益を兼ねて国内誌へ投稿される方もいらっしゃいます。そういう方がそろそろ国際誌へもと思って本書を手にとることもあると思います。著者はそのような社会人を嫌う可能性もありますが、研究的なことは民間企業や行政の人間がしてもよいはずで(勿論研究者を名乗ろうとしない限りですが)、土日や夜間を活用して場合によっては社会人大学院にも入学してそのような活動をすることが悪いとは思いません。
 その中で、優秀な方は大学とも縁が出来る方もたまにおられますが、そういう方を「自称研究者」、国内学会や企業とのつながりで大学に潜り込んだ、という一概に(事実そういう方もいらっしゃいますし、その中にはかなりたちが悪い方がいるのも事実)ひとくくりでは無く的確に実務を学生に教えることが出来れば有用な大学教員と税金の使い方、といえるのではないでしょうか。

 著者はターゲットとしていない可能性が高いですが、本書のニーズとしてはありそうな社会人だけど研究的なことに興味がある方、研究者というより学者的、博学的な方で研究もしてみようかなと思った方、そういう方へは研究者というよりそういう大学教員のあり方もあり得るといものがあった方が良かったと思います。
 ※そういう方が本書を読んで大学院への道を辞めるならそれはそれで著者としても良いと思いますし、「研究者」になるつもりならば死ぬ気で、という覚悟は求めることに変わりないと思います。実務家兼(研究者では無く)趣味であるならそれはそれで、決して「自称研究者」にならないようにと釘を刺せば良いのでは無いでしょうか。読む限り、自称研究者の本質は進歩も挑戦もしないでいることかと読むことが出来ましたので、進歩や挑戦の為に大学と関係する企業人などはよいような気がします(自称研究者にならない限り)。