不覚にも涙が止まらなくなる一冊

書評で散々言われているので付け加えることも無いが

 

 

 素晴らしい傑作だ

 訳者の最後の仕事でもあり、末期癌の中、必死に翻訳していたというところもまた泣かせる。

 カバーは白地だが、本自体は赤色だ。

 きっと最後のストーナーが手に取る赤色の表紙本をイメージしているのだろう。

 悲惨といえば悲惨な人生だったが不思議な清涼感と寂寥感が同居するもの。

 

 

 ただ、普通に考えて悲惨な人生ではあるが今で考えれば十分上層に位置する人生でもある(悲惨であっても家庭持ち、子持ち、終身雇用保障、一応は最後は教授、見送る人も友もいる)。

 現実の何者ともなれなかった者は、家庭も勿論子どもも友もいなければ、終生の仕事もささやかな名誉も無い。

 何の役にも立たなかった著書であっても、この世に残すものがあったストーナーに対して、著作は勿論最後に手に取る「何か」すらないものが大半であることが多い現在の何者にもなれなかった人からすると大部良い人生であったといえなくも無い。

 

 と,あまりにくだらない駄文を書いてしまったが、そんなことはどうでもよい。

 

 涙が止まらない一冊であり、書評通りの一冊だ。

 

 死ぬときに今一度再読したい一冊といえる。