アンブローズ・ピアスによる傑作。
何より、これにより「悪魔の○○」といういわば皮肉、反対表現もののジャンルが生まれたことが大きい。事実上のジャンルそのものを確定させたという意味で名著と言って良いだろう。
例えば「ジャーナリズム」を引いてみよう
ジャーナリズムp.122
「極めて強力な拡大器であって、この機器は、編集者たちの発言と印刷用のインクとの助けを借りてハツカネズミの鳴き声を論説委員の獅子に変え、国じゅうの人びとが(察するに)その発する声に息をこらして聞き入ることになっている。」
これほど見事な辞典もないだろう。
真理に至っては
真理p.142
「願望と見掛けとを巧みに合成して作り出すもの。(以下省略)」
とある種非常に鋭いことをいっている。ポスト真実の現在にとっておきの定義。
これも秀逸
扇動家pp.154-155
「隣人の所有する果樹をゆすぶる政治家――虫けらをふるいおとすのだと言って。」
まさに現代に良くいる政治家そのもの。
等などどれも秀逸かつ真理(笑)を突いた、反転の辞書である。